グリザイアの果実


──その学園は、少女達の果樹園だった。

『グリザイアの果実』 2011.2.25発売予定

総合 シナリオ キャラ 音楽 エロ 主人公 ゲーム性 NO.1キャラ
88 8 9 9 10 7 9 小嶺幸

シナリオ 8

外敵から隔離された学園を舞台に、それぞれ問題を抱える一癖も二癖も、というか癖だらけの主人公とヒロインとで繰り広げられる学園物語。シナリオの大まかなストーリーとしては、個別に入りヒロインとどんどん中が良くなり、恋人になる→主人公がヒロインの抱える問題を乗り越えられるように手助けし克服する→ハッピーエンドという流れになっています。

日常会話はとにかく面白い。大笑い出来ました。下ネタ多めでノリが独特なので好き嫌いはあるとおもいますが、自分はかなりハマって、何度も共通やり直すくらい大好きになりました。キャラが個性的でとにかく面白いんですよねぇ。主人公は社会常識に欠けていて、学生をしようとしてもいつも変な方向に向かっていくし、榊はクールになりきれないク―デレですし、天音はビッチだし、蒔菜は元気過ぎるほどに元気だし、みちるはアホですし、幸はとにかくもう全てが面白すぎますし、個性的すぎる面々によるテンション高めでテンポよく繰り広げられるかみ合わない会話シーンの数々はめちゃくちゃ楽しかったです。特に幸はすごい。大爆笑間違いなしの迷言多数で把握しきれないくらいです。蒔菜シナリオ突入後すぐの覆面赤裸々会議とか笑い過ぎて腹が痛くなったほど。あのイベントはホント大爆笑ものでした。

個別に入るとヒロインたちそれぞれが抱える問題に焦点が当たり、ギャグを交えつつも徐々にシリアスな雰囲気に向かっていきます。ヒロインたちの抱える問題はどれもとても重いものばかりで、先が見えない展開にどんどん引きこまれて行きます。特に各ヒロインたちの回想シーンはどれも強烈で良く出来ており、中でも天音の回想シーンは色々な意味で息がつまる展開で最初から最後まで目が離せません。個人的に良かったと思うのは、ヒロインたちの問題を主人公が解決するのではなく、あくまでもヒロインたち自身に解決させるために主人公が手助けするところ。ヒロインたちが主人公と恋仲になり、その問題に正面から立ち向かおうとする様子には感動します。まあ、中には物理的に解決できない問題を、主人公が物理的に解決することもありますが、そこは主人公の力の見せどころってところです。

あと忘れてはいけないのがバッドエンドの演出。恐ろしいほどに見事です。このゲームはほぼ全てのヒロインにバッドエンドが用意されているんですが、そのどれもが容赦なく、一言で言うとエグイです。バッドエンドに至る流れが丁寧に描かれており、選択肢がどちらも選んでも正解に見えるようになっているので、グッドエンドと信じた道がバッドに繋がっていたりも・・・。ヒロインの抱えている問題が問題なだけに、ほんの少し選択肢を間違えると取り返しのつかないことになると言うのが良く分かりますね。特に蒔菜バッドエンドの出来は特筆するものがあり、最初平和そうな雰囲気を出しておいて安心させてからのあの展開。鳥肌が立つ展開っていうのはああいうのを言うんだと実感しました

共通は笑い、個別では息もつかせない展開に魅了される。キャラによってシナリオの質に差がありますが、どのヒロインのシナリオも楽しめました。重いシナリオは苦手な方ですが、ここまで丁寧に、魅力的に見せられたら言うことないですね
キャラ 9

榊由美子

クールになりきれないク―デレ。いきなりカッタ―とか取り出しますが、学園一番の常識人。非常識軍団の振り回されてあせったり照れたりする様子が何だか可愛いですね。ツンとしていたのも最初だけですぐに打ち解けますし、クールぶって人を寄せ付けない雰囲気だしつつも、非常識軍団の非常識な行動についつい手助けしてしまうお人好し。ただ、残念ながら常識な分共通ルートでは一番影が薄くなりがちだったり・・・。シナリオは抱える過去も、シナリオ展開も蒔奈と似ており、蒔奈の方がよりどうしようもない感が強いという、共通どころか個別でも食われかかっていたり・・・解決方法も結構な力まかせですしね。グッドもバッドも2人とも幸せそうに暮らしているのは後味良かったですが、力及ばずグッドでもバッドでもハッピーエンドに成りきれない蒔奈と比べてしまうのも無理はないと思います。

周防天音

エロ担当。自らビッチを公言。主人公の留守中に主人公のベッドでオナニーしかける天音がエロすぎだった。そして、その後に京都弁?で素になって照れる様子が可愛かったです。普段は主人公に胸を押しあてたりしてるくせに、不意打ちされると素が出ちゃって照れるとかお約束ですがいい感じです。美人でスタイル超抜群で家事万能でその上エロいというハイスペックキャラ。個別に入ったばかりのころはエロだらけです。榊にあんなこと相談するなや。シナリオの一番の見どころは天音のエロさ・・・ではなく、主人公の姉・風見一姫が出てくる天音の過去回想。天音の過去のトラウマの出所が描かれているんですが、他のヒロインと比べても話の完成度が段違いで高く、最初から最後まで目の離せない展開に圧倒されました。人間の極限状況下での無力さ、そして狂気が描かれます。その後の展開は蒔菜ルートでの無双っぷり考えるとちょっと微妙かなぁ。ただ、EDの天音が許されるシーンは涙線に来て良かったです。

松嶋みちる

エセ金髪エセツンデレの道化者。アホでヘタレの愛すべきバカ。いつも主人公や蒔菜や幸にいじられてだまされて騒いでる姿が面白くもあり可愛らしくもあります。さもすればウザいと感じてしまうほどの鬱陶しさとおバカっぷりですが、個別ルートでおバカの裏の気持ちに気付くと見方が変わります。まあ、明らかに空回ってたりしてますけどねぇ。シナリオは他シナリオと比べて物騒なことはないですが、強烈で突拍子もない展開が続きます。ちょっとファンタジー入ってますしね。終盤の山場の生きることを放棄しようとしたみちるが、生きていたいと思う為に主人公が取った行動とそのあとの展開は個人的に大好き。あの起き上ったみちるの手を取る主人公がかっこよすぎました。あと、バッドエンドは強烈。蒔菜ルート程じゃないですが、かなりエグイです。最初選択肢の正解が分からずに普通に突入してしまってへこみました。

入巣蒔菜

「なのよさ」が頭にいつまでも残る美浜学園のマスコット的ヒロイン。最初は極度の人見知りにより主人公を避けていましたが、すぐに打ち解けて「お兄ちゃん」と慕ってくるようになります。頭は悪くないんですが、バカではないかというとそうではなく、破天荒で突拍子もない言動と下ネタの数々でみんなをかき回します。その対象は学園内の人を選ばず、どのキャラともいいコンビになれるのがすごいですね。シナリオは日本を牛耳ると言う名家のお家騒動から発展した問題に巻き込まれるんですが、かなり強烈です。主人公の超人っぷりは十二分に発揮されるんですが、それでも力及ばずに迎えるエンドはグッドでもハッピーとは言いずらいです。バッドはもっとやばい。衝撃的という言葉を通り越したとてつもない感情になりました。鬱嫌いの自分でもあまりの衝撃にすごいとしか言いようがなかったですね。

小嶺幸

頼まれた事は絶対にこなす真面目すぎて融通が利かない委員長メイド。幼馴染という設定も付いてくる、主人公や蒔菜と並ぶ非常識軍団の1人。キャラとしては一番好きですね。発言が面白くて仕草が可愛らし過ぎます。みちるを天然にからかったり、淡々とした感じでさらっと爆弾発言を投げ込んでくる様子が素敵。面白迷言が多すぎるので、幸の面白発言をまとめた幸語録が欲しいくらいです。覆面赤裸々会議で王子様のように求められたいという幸が可愛すぎておかしくなりそうです。シナリオは幸の歪に形成された性格を、自ら間違っているということを気付かせるのがポイント。やっていることは大きいですが結構あっさりしていた印象を受けます。幸の面白可愛さは自らのルートよりも他ルートの方が目立っていたかもしれない。尚、バッドエンドはインパクトでは蒔菜やみちるに劣りますが、後味の悪さは個人的には一番。

橘千鶴

美浜学園のロリ学園長。基本的には主人公に振り回されるだけという悲しい役回りだったり・・・。いや、幸とかにも普通に振り回されてますね。怒りと悲しみが半々ぐらいの、もはややけくそ気味に主人公を手伝う様子が哀愁を誘います。覆面赤裸々会議は色々と可哀想過ぎて直視できねぇ。A音「…同士C鶴…まさか…その…まだ膜が…?」 K嶺「…若いうちに女としての努力を怠った者の末路はこうなるという…まさに反面教師の鑑ですね…」 ガンバレC鶴。負けるなC鶴。

春寺由梨亜

主人公に振り回せれる悲しい役回りの人その2。千鶴と同じく主人公に振り回されてやけくそ気味になるのが印象的。普段は主人公をからかっているように見えて実際は逆の方が多いというA音さんの分析は間違っていなかった。
主人公 風見雄二 9

学生らしく生きることをしようとして学園に来た主人公。高い身体能力とスキルに反して、一般常識が欠如している軍人系です。その一般とはかけ離れた言動と思考回路には笑わされました。行動力と決断力が飛び抜けて高く、一度決めたことには迷いなく行動するのが見ていて気持ちいですね。ヘタレる要素が全くないので安心してみていられます。まあ、超人っぷりに関しては一部シナリオを除くとあんまり発揮される場面がなかったっていうのはちょっと残念ですけどね。
絵 9

キャラデザ、立ち絵、イベント絵、背景、SD絵ぼどれも文句なし。塗りは丁寧でとても綺麗で圧倒されます。1つのセリフの間に表情を変化させたりと、画面演出も凝っていますし、バリエーションも豊富で文句なし。あえて言うならばエロ絵以外のイベント絵が、シナリオの長さを考えるとちょっと少ないかなぁと思うくらいですね。
音楽 10

BGMも良曲揃いですが、それ以上に歌の充実っぷりが目立ちます。OP曲と各キャラごとに専用ED曲全6曲があり(マグロマン込で7曲)、そのどれもが名曲以上という充実っぷり。正直ここまで歌が良いゲームはそうはないと思います。特に好きな歌はOP曲の「終末のフラクタル」、流れるようなテンポの良い歌ですね。ED曲ではどれも良過ぎて選択に迷うんですが、その中でもあえて言うならば天音EDの「HOME」かなぁ。歌だけならば榊EDの「ホログラフ」の方が好きですが、EDへの流れとかを見ると・・・。いや、インパクトでいえば蒔菜EDの「迷いの森」も捨てがたいですし、やっぱり選べませんね。
エロ 7

絵の綺麗さが目立ちますね。各キャラ4〜5回で、質と尺は普通。純愛系ゲームとしてはかなり充実している方だと思います。エロシーンまでテキストが面白く読み応えがあるのが特徴ですね。天音のビッチぶりはとどまることを知りません。シーン数が多いと1シーンあたりの絵が少なくなりがちですが、惜しむことなくエロ絵がつかわれているのも印象的です。
総合 88

「豪華スタッフ陣で描く、フロントウイング10周年記念作品!」と大体的に銘打ってきただけの出来はあります、シナリオ、キャラ、絵、音楽、エロ、と全てが高水準でまとまっています。共通では何度も笑わせてもらいましたし、個別に入ってからは先の見えない展開に魅了されました。中盤に中だるみはありましたし、細かな部分では不満もありますが、最初から最後まで楽しめましたね。まあ、一姫関係の伏線が投げっぱなしなのは気になりましが、そこは続編に期待しときます。一姫は天音シナリオの回想を見る限り、すげー面白そうなキャラなのでまた会いたいです。



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